現代表の毛塚久恵が2015年に事業承継して丸10年。社長になってからの10年はどうだったのか、そして、これから先、品川運輸をどんな会社にしていきたいのか。11年目となる今だからこそ、改めてその思いを語っていただきました。
とにかく目の前のことを
整理してきた
––社長になられてから10年の一区切り。振り返ってみていかがですか。
正直にいうと、長いスパンで経営を考えるということはしていなくて、とにかくなんとか会社を続けられるようにとこれまでやってきて、本当にあっという間の10年でした。
私が結婚して1ヶ月で父(先代の社長)が亡くなったので、その頃は会社のことと家のことで、今振り返ってみてもあの時はしんどかったです。ただ、私自身は2002年に品川運輸に入社していたので、父の仕事を見ることができていましたし、仕事に対する考えを共有することができました。そのおかげで社長交代自体は円滑にいったかなと思います。
––社長交代することは決まっていたのでしょうか。
私は全く考えていませんでした。でも父としてはそのような思いはあったのだと思います。まだ私が高校生だった頃、当時、私はカナダに留学していたのですが、卒業が近くなり進路をどうしようかと考えていた時に、父が病気になったことが発覚しました。手術に立ち会うため、一時帰国したときに(当の本人は元気で空港にも迎えに来てくれたのですが)、「お父さん、会社どうするの」と聞くと「手放してもいいかな」と、その時は言ったんです。
でも思い返してみると、その頃はすでに京浜島の中間処理工場建設の計画を練っている頃だったと思うんです。家では仕事の話はしなかったので知らなかったのですが、子供が引き継いでくれないかなという思いはあったのではないでしょうか。父の病気がなければ、私は全く違った進路へ進んでいたと思います。

––事業を受け継ぐことになり、はじめはどんなことを考えていましたか?
当初は「ちょっと手伝いに来て」と言われてアルバイトのつもりでマニフェスト管理などの仕事をしていました。その後入社し、10年ほど事務仕事をしてから役員になり、気がついたら社長になっていました。社長になったからといって、私がどうしたいかというよりは、まずは会社を続けること、従業員の雇用を守ることを強く意識していました。
入社してから社長を継ぐまでの間に「中間処理工場」の本格稼働が始まり、もっとお客さんを増やして搬入量を増やしたいという現場の声も聞いていたので、自然とやることは見えていたと思います。

第一工場に続いて稼働した第二工場では、ペットボトルや缶の受け入れが始まっていたのですが、突然の機械トラブルや故障に見舞われることがあり、どうすればメンテナンスが上手くいくのか、品質を高めるにはどう人を配置したらいいか、どうすれば効率が良くなるか、そういうことをひたすら模索していました。ノウハウがない中始めた「中間処理」というものをいかに盤石にするか、でしたね。

––自分が社長としてどうしたいというよりは、目の前の問題を整えてきた。
そうですね。整えていくっていうのと、それから、社員をどう守っていくかということ。自分の判断一つで路頭に迷わせてしまうわけにはいかないので。ある日突然、父から「次の誕生日で社長やめるから。あなたがやりなさい。」と言われて急に社長になってしまったもので。これまで表立って話すこともなかったですし、どうやって組織を作ったらいいんだろう!ということばかりを考えていました。自分で経営計画を練るというよりは、先代達が築いた事業を"継承する"ということが、私の社長としての始まりだったと思います。
次に何をやるのか
夢を考える過程は面白い
––社長になって11年目を迎えて、現在はどんなことを考えていますか?
2023年に80周年を迎えるにあたってコーポレートリニューアルをしてブランディングの再構築やSDGsチームを立ち上げました。ホームページやロゴはもちろんですが、会社の理念と目標をより明確にするためにアップデートして、お取引先様にとってより良いサービスを提供できるように、また、社員にとって働きやすい環境となるような基盤づくりを改めて行いました。
![SHINAUN リサイクルセンター[第一工場]](images/column_Pres/kezuka_06.jpg)
11年目を迎えた今は、第2フェーズの段階だと考えています。作った基盤を最大限活用し、発展のためにもやらなくてはいけないことはたくさんありますが、中でもこれからは「人が集まる会社」にシフトしていくことが目標ですね。自分たちのことをもっと発信して、SHINAUNの理念を理解し、仕事にやりがいと熱意を持ち、「いいサイクル」について一緒に考えて実行してくれる人が集まる会社にしたいと思っています。
––「整える」から「耕す」のフェーズに入ったのでしょうか。
そうですね。時代が変わり求められる技術やマナーレベルが上がってきました。だからこそ個々が自主的に考え、実行し、コミュニケーションする力が、会社の利益(=事故・ケガ・クレームゼロ、顧客満足)に繋がるので、もっと注力していかないといけないことだと感じています。こういった基本的な事をクリアしていくこと。そこが経営者として面白いなと思っている部分です。
それがあるから、今後の事業をさらに発展させていくための「次は何ができるか」「どういうお客さんに向けて」ということを考えられるのかなと思います。

––基本的なことがあるからこそ、できる仕事なのかもしれないですね。
その想いはコーポレートメッセージ「いいサイクルってなんだろう」にも込めています。事故とケガを防止するための「安全」、社会環境を良くして豊かな未来であるための「サーキュラーエコノミーの構築」、そして「社員一人ひとりの活躍」。こういったことを達成するためには、どうすればいいだろう。社長個人の考えよりも、それぞれが「良い循環」について考え続けている会社でありたいと思っています。

––そんな品川運輸が目指すのはどんなことですか?
創業した頃の事業は、し尿汲み取りや家庭ごみを収集運搬することでしたが、今では「家庭ごみの収集運搬」、「事業系廃棄物の収集運搬」、「中間処理」と3つの事業を営むまで成長することができました。お客様や社員のおかげで何とか維持することが出来ており、日々感謝しています。
社会インフラを担う企業として、目指すのは、次の時代に合わせながら「これだったら品川運輸しか出来ない」ということですね。ここまでは他社さんもできるけど、ここからここは品川運輸だよね、というところを目指したいです。これがなかなか難しいのですが。

––10年前と比べて、今の世の中の流れはどのように感じていますか?
最近になって大きく変わったのが、家庭ごみの「プラスチック」の収集のルールが変わったことです。東京都ではほとんどの自治体で資源ごみとして出せるようになりました。プラスチックを燃やさずにリサイクルするという流れですね。環境に良い取り組みが進んでいると感じます。これからはリサイクルの時代がもっと進んでいくと思うので、当社もそのサイクルに関わり続けられるように私も次の時代を見据えて頑張りたいです。
ごみ袋と収集車の刷新
業界に先駆けて挑戦した取り組み
について
––2025年から進められたごみ袋のデザインリニューアルプロジェクトを教えてください。
事業系ごみを契約された会社さんに購入いただく専用のごみ袋があるのですが、もともとは不燃が赤、可燃が青だったんです。それが直感的にも分かりにくいというのもあり、コーポレートリニューアルのタイミングでごみ袋の刷新のプロジェクトも進めることになりました。
せっかくデザインを変えるのなら、ごみを"楽しく"出していただいて、なおかつ出したときの景観も良くしたいなと思ったので、デザイナーの北原さんに紹介いただいたイラストレーターのunpisさんのイラストを採用しました。

これまでは「可燃」「不燃」のみだったのですが、リサイクルを推進するために「資源」専用の袋を新しく追加しました。運用も分かりやすくなったし、結果としてこんなに可愛いものが出来ました。このごみ袋を見た方からは、「これだけ欲しい」とか「売っていないんですか」と言っていただけています。
––契約事業者の方からの反応などはありますか?
直接お話を聞く機会がないのでそこまでは分からないのですが、私の通勤経路にこの「燃やさない袋」が出ている場所があるんです。この猫ちゃんをきちんと正面に向けて出していただけていて、すごく人通りが多い所なので、特に子どもの目線からもよく見えていいなと思いながら見ています。

このリニューアルしたデザインは、グッドデザイン賞を受賞することができました。審査員の方のコメントで、「ごみを捨てるという行動から誰もが取り組める環境問題に、子どもから大人まで楽しくコミットできる極めて意義のある作品」と評価いただけたことが嬉しかったですね。
せっかくなのでもっと見ていただける機会を増やしたいと思っていて、学校などへの提案もできるといいし、ごみ箱とセットにして「サーキュラーステーション」としてプロデュースしていくようなことも面白いなと考えています。

––そして収集車も新しいデザインにリニューアルされましたね。
新しくなったのは「産廃」の収集車で、まずは2026年の納車分3台が新しいデザインになりました。こちらもごみ袋に続いてunpisさんにイラストを描き下ろしていただきました。新しいデザインの3種類のトラックが納車され、実際に見たのですが、とっても目を惹きます。みなさまの反応が楽しみです。


––収集車のデザインリニューアルにはどのような思いがあったのでしょうか。
会社のPRということもあるけれど、正直な思いとしては、今、収集車に対するクレームが多いということがあります。トラックに対するイメージが「怖い」というのがあるみたいで、デザインの力で収集車が怖くない存在になったらいいなという思いがあったんです。
それに良い意味で目立ってしまうので、事故の抑止に繋がるといいなと思っています。ドライバーも注目されているという意識があることで、些細な作業でも丁寧さを心がけたり、安全運転によって事故を防止してくれることに期待しています。
それから保育園などにパッカー車を展示して、この仕事をもっと知ってもらう機会をつくっていきたいです。子ども達にもっと好きになってもらって、ヒーローのように「ごみ収集の人かっこいい」とか「将来働きたい」って思ってほしいですね。
「循環」はみんなでつくるもの
––リサイクル推進は難しいことなのでしょうか。
それは工夫次第だなと思います。京浜島にある品川運輸の工場は全てリサイクルを推進していますし、その中にある「粗大ごみ」の中継施設は、「リサイクルベース」として自治体から委託を受け稼働させている場所になります。ここでは、粗大ごみを「人の手」で選別したり分解して可能な限りリユースやリサイクルしています。




行政と一緒に取り組むことで、区民の方にも「こうやってリサイクルをやっています」とお知らせすることが出来て、三位一体での取り組みになっています。
事業系廃棄物も「排出する人」、「回収する事業者」、「受け入れる事業者」がもっと協力しあえばまだまだやれることはあるんじゃないかなと思います。

––それぞれの立場を超えて、目線を合わせることが「リサイクル推進」の鍵なのですね。
品川運輸としても色々と考えてはいるのですが、まだまだ障壁が多いのが現状です。だから、まず私たちが動いていけるとすれば、立地の強みを活かすこと。東京都内にどういう事業者がいて、どういうニーズがあるのか、そういったことをしっかりとリサーチしたうえで、「何を、どうやるか」を見定めていければと思っています。
––毛塚社長にとって、次の10年は難しくも意義のある挑戦になりそうですね。
先代から品川運輸を継いで、まずは目の前のことに必死でした。でも今は、発信することやアクションすること、新しいことを考えるのも楽しいです。次の挑戦といっても、私がどうしたい、ではなく、みんなで一緒に「循環」をつくることが実現できたらいいのかな。


代表取締役社長
毛塚 久恵
2002年入社。
2015年に先代から事業承継をする。3人の子どもを育てる母でもある。育児と社長業の両立に日々挑戦している。
執筆・編集・写真
フリーランスライター / エディター
堀合 俊博
(a small good publishing)
フォトグラファー
川島 彩水